数物セミナー名古屋談話会Lite 概要

名古屋では3月から月1回のペースで小規模な談話会を継続していきたいと考えています。
一回の発表者は2人前後で、講義形式の発表のあと議論や雑談をしながら、交流 をメインにとし、これまでよりさらに気軽に参加・発表が可能なイベントを目指 していきます。

数物セミナー名古屋談話会Lite 第7回

日時・場所

2013年3月11日(月) 名古屋大学東山キャンパス理学部1号館(多元数理科学研 究科)3階309号室

アブストラクト

囚人のジレンマと量子ゲーム理論

名古屋大学大学理学部物理学科3年 佐野 祐太

「囚人のジレンマ」は古典ゲーム理論でよく耳にする。 自分にとって最も合理的な判断に基づいて行動すると、 いつの間にか損な行動をとっているというのが、 このジレンマである。 しかし、そこに量子戦略という考え方を持ちこむとこのジレンマが解消できる可能性がある。 当日は、古典ゲーム理論を概観して、その問題点を洗い出し、 量子ゲーム理論の可能性を説明する。 時間が余れば、心理学実験における当然原理の破れも、 量子力学基礎論は説明し得ることも述べようと思う。 心理学、社会学に量子力学の考え方を持ち込むのは面白い。 日経サイエンス2013年3月号にこの内容が概説されているが、 私の発表では定量的に紹介したい。 ゲーム理論と量子力学のどちらも知ることができるので一石二鳥な内容である。

リーマンゼータ関数の関数等式:特別な関数のフーリエ級数の応用例

名古屋大学大学院多元数理科学研究科M1 Ade Irma Suriajaya

リーマンゼータ関数はほぼ300年前から知られている数論でよく扱っている関数 の一つである。 リーマンゼータ関数の零点は素数分布に親密な関係があると知られている。 そこで、リーマンゼータ関数の零点を研究するにはオイラー積及び関数等式は大 切な役割を持っている。 リーマンゼータ関数の関数等式はリーマンゼータ関数の全複素平面への解析接続 及びリーマンゼータ関数の2点s と 1-s の間の関係を示している。 その関数等式のよく知られている証明方法の1つとしてテータ関数の関数等式を 用いる方法であるが、 今回の話では別証明として、ある関数(今後は「のこぎり関数」と呼ぶ)のフーリエ級数を用いて証明する方法を紹介したいと思っている。

タイムテーブル

9:00 受付開始
9:30 開会
9:35?10:45 『囚人のジレンマと量子ゲーム理論』
佐野 祐太
11:00?12:10 『リーマンゼータ関数の関数等式:特別な関数のフーリエ級数の応用例』
Ade Irma Suriajaya
12:25?12:45 数物セミナー紹介
13:00 閉会

数物セミナー名古屋談話会Lite 第6回

日時・場所

2013年1月6日(日) 名古屋大学東山キャンパス理学部1号館(多元数理科学研 究科)5階552号室

アブストラクト

Einsteinと量子論

名古屋大学物理学科 4年 瀧 瑠璃香

はじめに、量子論というものが数学というtoolでどのように記述されているのか を概説します。 その後、1935 年に三人の物理学者 Einstein-Podolsky-Rosen によって執筆され た、EPRパラドックスとして有名な論文
「Can Quantum-Mechanical Description of Physical Reality Be Considered Complete?」
を手掛かりに、量子論の理論構造が物理的にどう解釈されているのか 皆さんと一緒に考えていこうと思う。( 合同合宿に参加された方は、特別講義+αだと思っていただければ良いかと。 あの時よりchaosにせす、ちゃんと最後まで行く予定です。笑)

二重スリット実験の量子論

早稲田大学先進理工学部応用物理学科 3年 鳩村 拓矢

" the heart of quantum mechanics " Richard P. Feynman
二重スリット実験は量子論の本質て?ある。

光子を一つずつ二重スリットに投げ入れていく。 スクリーンに出来る光の粒は次第に干渉縞をつくる。 光子は必ず一つの粒子として観測されるのだから、どちらか片方のスリットを通 過したはずである。そこで、光子がどちらのスリットを通過したのかを測定する。 そうすると、その干渉縞はたちまち消えてしまう。 すなわち、光子がスクリーンに到達するまでにどのような経路を通ってきたのか 知ることは不可能である。
これが今までの量子力学の測定の枠組みであった。 しかし、1988 年に Aharonov によって提唱された弱測定の枠組みでは、 この光子の経路を測定できるのである! 今回の講演では、弱測定の理論とその特異性、そして二重スリット実験への応用について解説する。

Aharonov-Bohm効果とゲージ理論

名古屋大学大学院多元数理科学研究科 M1 石川 楼丈

物理でたびたびでてくるゲージ変換というもの。数学ではどのように 記述されるのか、ゲージ場の存在を示唆するアハロノフ・ボーム効果を 例にとり説明しようと思います。 この数学、ゲージ理論というのは、ゲージ場の量子化の一歩前にあたるものですが、 ゲージ場 の量子論においても幾何的イメージを抱く助けになると思います。

デコヒーレンス-量子環境問題-

京都大学工学部物理工学科原子核コース量子物理学研究室 4年 伊藤 康介

量子環境問題、自然破壊が問題となる今、量子力学でも環境問題が・・・
なんて話では全然ありません。 釣られた人も何かの縁だと思って見ていってください。 本当は周りの環境系と相互作用する開いた量子系(開放系)の話です。
今回は開放系の現象のなかでも特に、デコヒーレンスについてお話ししたいと思 います。 これは簡単にいえば、開放系と環境系の状態が相互作用によって”絡み合う” ことによって開放系の状態同士の干渉性が失われるという現象です。
量子力学特有の状態の波同士の干渉性が失われるというのは非常に興味深い現象で、 現在最も基礎の理論である量子力学からどのようにして古典的自然像が 説明されるのかといった議論や、観測の問題にも関わってきます。
今回合成系の量子力学からどのようにデコヒーレンスが現れるのかを、 いくつかの(時間があれば)モデルに言及しながら見ていこうと思います。
有名なあの猫も登場したりしなかったりするかもしれません。

タイムテーブル

12:00 受付開始
12:30 開会
12:15?13:45 『Einsteinと量子論』
瀧 瑠璃香
13:45?15:15 『二重スリット実験の量子論』
鳩村 拓矢
15:15?16:45 『Aharonov-Bohm効果とゲージ理論』
石川 楼丈
16:45?18:15 『デコヒーレンス-量子環境問題-』
伊藤 康介
18:15?18:45 数物セミナー紹介
18:45 片づけ・アンケート回収
19:00 閉会

コンセプト

直感とは相反する量子論という理論か?完成して 100 年近くの時か?過き?た今、量子論か?生み 出してきた様々な概念を数学・物理を使って色々な視点から眺めてみよう!!ということて?、 4 つの講演テーマをトリカ?ーに、皆て?議論を深めることを目標に企画します。

数物セミナー名古屋談話会Lite 第5回

日時・場所

2012年11月4日(日) 名古屋大学東山キャンパス理学部A号館3階 A328号室

ちょっとDeepな一般相対性理論

名古屋大学理学研究科EHQG研博士前期課程1年 桂川 大志

Standard Model Higgs らしきものが見つかり、素粒子物理が大いに盛り上がる中、あえて一般相対性理論をテーマに話をしようと思い立ち、 しかも、教科書等ではあまり説明されないような内容を選びました。 基本的には話題を紹介していく形式で、お手軽・簡単さを目指したので、知識の有無は気にせずに聞いて頂けるかと思います。 相対論を知っている方もそうでない方も、楽しみながら勉強できる、そんな雰囲気を目標にして進めていきます。 どうぞ、お気軽にご参加ください。

やさしい無限次Galois拡大

名古屋大学理学部数理学科4年 平子 裕記

Galois 理論の基本定理とは, Galois 拡大の中間体とその自己同型群の部分群との間に1対1の対応が存在する, というものです. いちばん典型的な応用例は, 「5次方程式の解の公式の存在について」ですね. ところが,この Galois 拡大が無限次拡大であるとき, Galois 理論の基本定理が成り立たなくなることがあります. 今回の発表では, まずその成り立たない例を説明し, どう改良すれば, Galois 理論の基本定理が成り立つのかを述べます. そして, 先程の例にその Galois 理論の基本定理 Remix を適用します. 前提知識として, Galois 理論の基本定理が分かっているといいです. また学部生に対しては, 位相空間について復習しておくと, 話がより分かりやすくなります. 最後に, 私の質問に真摯に答えてくださった Cafe David の諸先輩方に, 感謝の意を表します. また, この資料の推敲を手伝ってくれた広島大学の中川督太さんに, 感謝の意を表します.

相転移

東京理科大学理学部応用物理学科3年 野中 洋亮

相転移と言えば、まず思い浮かぶのは水→氷などの固体・液体・気体の3相の変化だろう。 しかしその本質は注目する秩序状態の変化であり、例えば水分子が乱雑な状態から整列した状態(秩序状態)に変化して水は氷になる。 相転移を起こす秩序状態は格子の歪みや電子の局在などさまざまであり、超電導・超流動といった不思議な現象も相転移を起こして発言する。 ここでは特に固体の相転移に注目し、常誘電-強誘電の相転移や金属絶縁体転移、特にパイエルス転移についてそのメカニズムを追っていきたい。

タイムテーブル

12:00? 受付
12:30 開会
12:45?13:45 『ちょっとDeepな一般相対性理論』
桂川 大志
14:15?15:15 『やさしい無限次Galois拡大』
平子 裕記
15:30?16:00 休憩・交流
16:00?17:30 『相転移』
野中 洋亮
17:45?18:15 数物セミナー紹介
18:30 閉会

ポスター

数物セミナー名古屋談話会Lite 第5回

数物セミナー名古屋談話会Lite 第4回

日時・場所

2012年8月27日(月) 名古屋大学東山キャンパス理学部1号館(多元数理科学研究科)109409号室

ダイエットには役に立たないHiggsの話

早稲田大学先進理工学部物理学科3年 桑垣 樹

今年7月にLHCにおいて、Higgs粒子と考えられる『New Boson』が5σを記録した。 この結果は大きなニュースとなり、多くの解説がテレビや新聞においてなされた。あなたはこれらの解説に満足しただろうか?
“なぜ質量を与える粒子が必要なのか?なぜ今まで見つからなかったのか?なぜ見つからなかったにも関わらず、存在が確実視されていたのか?なぜ…”
では、なぜ報道では解説されないのか?その理由は、その物理の背景が難解であるばかりでなく、ダイエットに役立たないからである。 今回の発表では、そのようなHiggsの物理をなるべく初等的に、かつ、一歩踏み込んで解説することを目標にする。 Higgsのありがたみや、そこにある物理の美しさを皆さんと共有できたならば幸いである。

On the Theory of Optimal Transportation and It's Application

名古屋大学大学院情報科学研究科計算機数理科学専攻D2松井 孝太

表題のTheory of Optimal Transportation は,日本語では最適輸送理論と言い,“ ある場所にあるものを,別の場所へ最小のコストで移動する方法”が研究対象である[2]. 18 世紀にGaspard Monge が提出した問題がはじまりとされているこの理論は,その成り立ちから,確率論や経済学等と密接に関連している. 近年ではさらに幾何学や偏微分方程式論との関連が注目され,純粋数学においてもホットなテーマの1つである. 本発表では,この“ Mongeの問題”から始まる最適輸送理論の流れをざっと眺めた後,最も基本的なRn 上の最適輸送の話を紹介する. 特に,最適輸送写像の存在と一意性について本質的なBrenier の定理を知ってもらうことが目標である. また,Brenier の定理の応用として,Sei[1] による統計解析への適用例も,合わせて紹介したい. 時間が許せば,講演者の現在の研究との関連や展望についても少しお話する.
参考文献
[1] T. Sei, "Parametric modeling based on the gradient maps of convex functions" Techni-cal Report METR2006-51, Department of Mathematical Engineering and Information Physics, The University of Tokyo, 2006.
[2] C. Villani, "Optimal Transport: Old and New" Springer-Verlag, 2009.

確率量子化 -another quantum mechanics-

名古屋大学物理学科4年 駒田 翔

1966年、量子力学も完全に普及し、日夜その研究がおこなわれていたなか、ある一本の論文がE.Nelsonによって発表された。 その内容は、Schrödinger方程式を、Newton方程式から導出するという、驚愕のものであった…
Nelsonの確率量子化(確率力学)が初めて発表された論文の内容を紹介・概説します。 必要な数学的道具(ブラウン運動とか)を適当に解説しながら、そのアイデアを紹介して実際に導出をやってみたいと思います。 その後は、この量子力学の作り方の意義や、この方向の最近の動向などについて、個人的な見解(つまり余計なこと)を混ぜながら議論してみたいと思います。 すでに量子力学を知っている人には新鮮な気分を、量子力学を知らない人には広大すぎる量子力学の世界の一端を楽しんでいただければ幸いです。

タイムテーブル

12:00? 受付
12:30 開会
12:45?13:45 『ダイエットには役に立たないHiggsの話』
桑垣 樹
14:15?15:15 『On the Theory of Optimal Transportation and Its Application』
松井 孝太
15:30?16:00 休憩・交流
16:00?17:30 『確率量子化 -another quantum mechanics-』
駒田 翔
17:45?18:15 数物セミナー紹介
18:30 閉会

数物セミナー名古屋談話会Lite 第3回

日時・場所

2012年7月18日(水)16:30-18:30 名古屋大学東山キャンパス理学部A館理学図書室多目的室

情報と通信―その数学的基礎―

名古屋大学物理学科4年 高橋 光成

1948年、数学者クロード・シャノンによって『通信の数学的理論』が発表されました。
今回はこれに基づき、情報とは、通信とは何かという問いかけから入り、「情報量」「情報のエントロピー」といった概念を導入した後、 現代情報化社会への扉を開いた「情報源符号化定理」「通信路符号化定理」の紹介をしたいと思います。

数物セミナー名古屋談話会Lite 第2回

日時・場所

2012年6月16日(土)17日(日)13:20-16:30 名古屋大学東山キャンパス理学部1号館(多元数理科学研究科)1階109号室

バナッハタルスキの逆説

愛知教育大学初等教育教員養成課程数学選修3年 小谷希織

―ポケットの中にはビスケットがひとつ♪ポケットを叩くとビスケットが有限個の小片に分割され回転・平行移動により元のビスケットと同じビスケットが2つできる―
豆と太陽の例えで有名な『バナッハタルスキの逆理』の主張を表した、某SNSのつぶやきです。 1つのビスケットが2つになるなどにわかに信じられません。
今日は厳密さよりも、『どのような分割をするのか』『どうやって2つにするのか』などの疑問を感覚的に解決していくことを目標にします。
そして途中に出てくる『軸』とは何か、みなさんと一緒に考えていきたいと思います。

ポスター

詳細はこちらのポスターにも掲載されています。
第2回数物セミナー談話会Liteポスター(PDF)

数物セミナー名古屋談話会Lite 第1回

2012年3月3日に名古屋大学にて開催し、10名の方に来場いただきました。発表者ならびに参加者のみなさま、ありがとうございました。

日時・場所

2012年3月3日(土)10:30-17:00 名古屋大学A4講義室

アブストラクト

時空の幾何学

時空。 なんとなく壮大でカッコいい響きがあります。 SFでよく超えられたり旅されたり歪められたりするので、別に相対論に触れたことのある人でなくてもおなじみの言葉でしょう。 しかしその実体はいったいどういうものなのでしょうか。 時間と空間に関する人間の認識は、物理学のパラダイムとともに変遷してきました。 今回は基本的な数学と物理の知識をもとに、時空という概念を数学的幾何学的に考察し、皆さんにそのイメージをつかんでいただくことを目標にしたいと思います。

解析概論からリーマン面へ

高校・教養の微積分で不定積分を習いますが、うまく計算できることもあれば、どう変数変換してもうまく行かないこともありました。 この話を入口に、リーマン面の理論に入門してみたいと思います。 現代的には1次元複素多様体として直ちに定義されてしまうリーマン面ですが、その由来が分かるような話にできればと思っています。

3K宇宙マイクロ波背景放射で探る初期宇宙

宇宙誕生後38万年の瞬間に放たれた光「3K宇宙マイクロ波背景放射」は、それ以後に出来た星や銀河など宇宙の様々な構造を通り抜け、それ以前の宇宙の姿を我々の目に写し続けている。 現在では、この光の分布の理論的、実験的解析によって、プランクスケール付近の宇宙極初期に、 どのような粒子が何種類ありどのような相互作用をしていたか、重力がどのような状態にあったか、ということまで明らかになりつつある。 本発表では、このような研究の概念、手法と最新の成果を、私の研究と絡めながら簡単に説明します。


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